のれん探訪
「丸萬本家」
大阪「NOREN」百年会 会員
受け継がれゆく秘伝の出し、伝統の味
天高く馬肥ゆる、食欲の秋。季節柄なにを食べても美味しいが、これからの季節、気の合った仲間や家族とワイワイやるなら、やはり鍋だろう。
鍋料理もさまざまだが、食い倒れのまち・大阪の郷土料理「魚すき」は、すき焼き鍋のような浅めの平鍋で、魚介類や野菜を炊きながら食べるヘルシーな〝逸品〟。
大阪で「魚すき」が生まれた経緯は定かでないが、かつて天下の台所といわれた大阪には全国の米や特産が集まり、良質の塩や醤油をはじめ、北海道の昆布、四国の鰹節、瀬戸内のカタクチイワシなど〝出しの素〟にはこと欠かなかった。それらと大阪湾、瀬戸内の多彩で新鮮な魚介が結びつき、割下式すき焼きの魚介版ともいえる「魚すき」が生まれたのだろう。もちろんすき焼きと同様、御飯のおかずにも酒の肴にもなる。
幕末の元治元(1864)年創業の丸萬は、明治期の料理店案内書にも「元祖海魚すきやき」と紹介される魚すきの老舗。初代店主・飯井藤吉は能登(石川県)の武家出身だったが、武士に見切りをつけて商いで身を立てようと大坂へ進出。瓢箪山稲荷神社(東大阪)の辻占で「西の賑やかな場所で商売せよ」とのお告げを受け、難波の戎橋南詰に店を開いた。家伝によると辻占の際、傍らを盆に丸い饅頭を載せた人が通ったので、店名を「丸萬」と決めたとか。看板の瓢箪も稲荷神社にちなむ。
折からのすき焼きの流行や立地の良さも手伝い家業はたちまち繁昌、「魚すきの丸萬か丸萬の魚すきか」と名を馳せたが、現在のレシピが完成したのは、五代店主の後藤市蔵、六代の武美の頃。改良を重ねた味のポイントは〝魚の臭みを感じさせない出し〟に尽きる。
タイやハモ、サワラ、エビ、イカ、アカガイなど新鮮な魚介類と、野菜、焼豆腐、生麩などを取り合わせ、秘伝の出しでいただく丸萬の魚すき。昭和4(1929)年に4階建のモダンな洋館に建て替えられた際には、ミナミの新たなシンボルとして大いに賑わったという。戦災後は鰻谷に移転していたが、平成19(2007)年1月、堺筋本町の現地に新築オープン。店舗外観は、戎橋南詰の初代店舗を模しており、老舗にふさわしい歴史と風格が漂う。
夜のメニューは魚すきとお弁当、御膳のみ。時代に流されることなく、守り続けて140余年、丸萬の伝統、大阪の味は今も健在だ。
住所:大阪市中央区瓦町1-5-15ヤスダEC瓦町ビル1F
電話番号:06-6201-4950
上:魚すき
秘伝の出しが活きる「大阪の味」
下:昭和4年完成の店舗
戎橋南詰にあった旧店舗の外観。モダンな4階建の洋館が人気を集めた。階上には畳敷の大広間があった








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